指先とハンドクリーム

食べたり読んだり日記を書いたり

日記:9月5日〜9月10日

9月5日(火)

家でやっている仕事に手をつけて無さすぎてクビになりそう。とはいえ、お店での勤務日数を増やした上、10月から時給も上がるので全然まかなえそう。一応ログインはしてますよと形跡を残す程度の仕事を昨日と今日の朝やった。

午前中、ついに日記本が届いた。30部ってこんなコンパクトなダンボールに収まるのか、と思うくらいの大きさで開けると隙間なくびっちり日記本が詰まっていた。すごい!本当に本になってる!Tさんに描いてもらった表紙、やっぱりとても良い。とりあえず乱丁や落丁が無いかパラパラとめくる。Tさんに届いたぞー!と見せた。まだ中身は見せてない。

週末の文学フリマで使う画用紙やカードを買いに100均へ。ポスターもチラシもないので自分で手書きするしかない。名刺がわりのカードの裏に食べものシールを貼って、一言添えたら面白いかなと思いシールも買った。

いつも空いてる穴場のカフェに寄ってしばらく日記を書く。最近習慣が乱れてしまって日記の更新が滞りがち。書いている時はこんなに楽しいのに重い腰を上げるまでが長い。気が済むまで書いて帰った。

 

9月6日(水)

5時20分起き。早起きして仕事を早めに終わらせるのが好きなTさんも同じ時間に起きた。眠い、眠すぎる。訳のわからないままメイクして、ヘルプ先のお店へ。春頃から定期的に行っているのでほとんどのスタッフの人たちと顔見知りになった。和やかに会話出来るくらいには親しいので緊張とかは無いけれど、久しぶりに来る人間に店を任せて何かあったらどうするんだと毎回思っている。毎回何もない。

なんやかんや汗をかいたので帰宅後すぐお風呂。晩ご飯は焼き鮭、昨日の残りのお味噌汁。夜、ベランダに出るとびっくりするくらい涼しくて秋を感じた。「最近朝晩涼しくなってきましたね〜」というお決まりの会話をするわけだ。

 

9月7日(木)

昨日出来なかったので朝から大量の洗い物を片付ける。私の洗い物は多分市内で一番遅い。普段だらしないくせにこういうとこだけ変に几帳面で、せっかく洗ったのに汚れが残ってるとか許せないので丁寧に洗って念入りにゆすぐ。どのくらい流せば洗剤が落ちているのか分からない。触ってヌルヌルせず、キュッとなればいいんだろうけどゴム手袋をしているから分からない。なので一度、母の皿洗いを見せてもらったことがある。

数十分かけて終わらせ、ピッカピカになった食器カゴを鼻の穴を膨らませて見た。こんな量になる前に洗えば良いだけのことなのに。

一昨日買った画用紙で、文フリ用にポスターを作った。日記本の表紙をカラー印刷したものを真ん中に貼り付け、周りにブースの番号や本の中身の紹介などを書いた。名刺代わりのカードに名前と簡単な自己紹介を延々と書く。その裏に食べものシールを貼り付け、一言コメントを書いていく。作業作業。食べものシールのバリエーションが48種類もありコメントもその分考えなければならず、なんでこんなことやってんだろうという気持ちになった。私は面白いと思ったけど他の人がそうかは分からないのに。ものすごく無駄なことに思えてきた。40枚くらい書いて飽きて途中でやめた。

気に入っているのは「みかん/もう久しく冷凍みかんなんて食べてなくないですか?」「たまねぎ/炒める時間は自分の元気度と比例します」

晩ご飯はTさんの作った豚肉とかいわれと卵の炒め物。

 

9月8日(金)

今日も早朝からヘルプ先のお店へ。一緒になった学生バイトくん、朝からしゃかりき頑張ってくれてとても嬉しかった。ほとんど見ず知らずの私と朝からバイトなんてダルいだろうに、偉いじゃないか。後で出勤してきた社員さんに猛プッシュしておいた。久しぶりに会ったパートの方は、私がヘルプに来たことを大層喜んでくれて「私、ゆきこさんのこと大好きなの」と帰る前に伝えてくれた。そんな素直な言葉を貰うと照れてしまって「いや〜ん嬉しいです、そんな、いや〜ん」とくねくねしてしまった。大好きな人には大好きと伝えるべきですよね。

スーパーに寄って帰宅。まだ残っていたお味噌汁と鯖のお寿司を食べた。ずっと前から野菜室にあった、もうダメだと思っていた桃をTさんが剥いた。全然きれいな色。桃って結構持つのか…?美味しくてバクバク食べていたら「そんなに食べるなら次から自分で剥かなきゃダメだよ」と顔をドアップにして言われた。ごめんなさい。

 

9月9日(土)

お昼前なのに洗濯を干すとき風が涼しい。もしかしたら、薄手のシャツなら、長袖が着れるかもしれないと勘違いしてしまう。冷凍うどんをチンして、納豆、キムチ、卵、青のりをトッピングして混ぜたものを食べて遅番で出勤。石焼ビビンバみたいな味がした。

日が差すとやっぱり暑くて裏切られたような、それでも前みたいな暑さはもう二度と来ないんだと確実に思わせるような風が吹いて、あー夏も終わったなと思う。乗り越えた私よ、皆よ、我々の勝利だ!

明日文フリなので絶対無事に帰宅せねばならないと慎重に行き帰りした。22時頃帰宅。ベッドの上でTさんが私の日記本を読んでいた。いつでも読んでいいよと置いておいたものだ。いつだったか日記本を作ると決めた時に、Tさんについて細かく言及してはないけど、日記を書く以上絶対に切っても切り離せないからとても頻繁に登場するけど大丈夫?と確認した。もちろん嫌がるようなことは書いてないつもりだし、その辺は気をつけてるよと伝えると「ゆきこのことは信用してるから心配してない」と言ってくれたのだった。それでもまじまじと読まれると恥ずかしい。けれども一つも隠し事はしたくないので隅々まで読んでチェックしておくれ!という気持ちにもなった。お風呂を上がっても薬を塗り終えてもまだ読んでいて、そしてとうとう最後まで読み終えた。

どうだった…?と恐る恐る聞くと「面白かった!」と笑顔で言われ、そっか、面白かったか〜!と抱き合った。こんなしょうもない、と思われるのはやっぱり辛いのでひとまず面白く、Tさんが嫌な気持ちになるようなことはないみたいで安心した。

いよいよ明日か、とそわそわした気持ちで布団に入った。Tさんはいつも通り電気を消して3秒で寝ていた。

 

9月10日(日)

7時20分に起床。9時過ぎの電車に乗らないといけないのにTさんが「朝マックに寄って、非日常を味わうんや」と言ってくるものだから慌てて用意した。朝マックくらいで非日常を味わえるところが私と同じだ。

ちゃちゃっと朝マックをして、電車に乗って梅田へ。谷上線に乗り換えて天満橋駅で降りる。会場のOMMビルはとても分かりやすいところにあってすぐに発見。キャリーケースを引いて歩いている人、カバンを抱えている人、あれみんな文フリ出展者だよ!とTさんに興奮気味に言う。会場内に入ると想像以上に広く、想像以上に皆さんのブースの設営が豪華であっけに取られる。自分のブースを見つけて、両隣の方とご挨拶。まずい、みんななんかポスターを吊るすスタンドとか本をディスプレイするものいろいろ持ってる…!と盗み見た。かろうじて家から持ってきた布を机に敷いて、木のトレーに本を並べ、机から垂らす形でポスターを貼った。しょぼい。前から見て初めて分かったけれど、机にポスターを貼っても位置が下すぎて、書いてある内容が全然見えなかった。初出店だからこんなもん、こんなもん!と思っているうちに「来場者数が多いため10分早く開場しまーす!」とアナウンスが流れて慌てて座った。

開場するとわんさかと人が来て私のブースの前を次々と横切るようになった。ん、今から何をすれば?とちょっと顔が引きつる。これ、全然売れなかったらただ宙を見つめて座り続けるのか…とヒヤリとした。ふいに「買ったるわ」と照れくさそうにお客さんのフリをしたTさんが目の前に現れて一冊買ってくれた。初めての売り上げ。ありがとうございます!と600円をいただく。

左隣の方が声をかけて下さった。並んでいる本を見ると、よく本屋で見かけるものが何冊かある。「ひとり出版社なんです」と仰る。この本、知ってますと『ナンセンスな問い』を指差すと「あぁそれは僕が書いた本です」と言うので驚いた。心の中では、ご本人ですか〜!?えっ、すっげぇ!!有名な本の!著者!!と大興奮していたけど緊張もあり頑張って控えめにした。

売るって言ってもどうすればいいんだろうと思ったけれど、ひとり出版社の方が「こんにちは、代わりに読む人です」としきりに出版名で挨拶していたのでそれに習って通る人にはこんにちはと挨拶することにした。ビラ配りの人の気分。段々と慣れてきて、じっと見ている方には「日記本です」「日記をまとめたもので、良かったら読んでみてください」と声が出るようになってきた。

そこからは夢中で、普段の接客魂に火がついたのか粘り強く挨拶と紹介を繰り返した。見本誌を手に取って下さるまでが本当に難しく、それでも試し読みをした方のほとんどがご購入して下さった。見本誌コーナーで見ました、とブースに来て即買いされた方、京都の学生さん、ジャケ買いに近いです、というお兄さん、印象に残っていたのでと戻ってきてくれた方、人の日記なんて読んだこと無いですよ、という方。買って下さることももちろん嬉しかったけど、日記や日記本についてたくさんの方とお話し出来たことが何よりも楽しく、「人の日記を読むのが好きで」と言われたときは「良いですよねぇ日記!私も普段日記本とか読むの大好きで!!」と(多分大声で)早口で話してしまった。さらに嬉しかったのは、6月、日記にまつわるイベントで会った映画好きなDJ男子が来場していて、私のブースを見つけて日記本を買ってくれたのだった。あの時話しかければ良かったなと思っていたので、また日記についてお話しできてとても嬉しかった。アプリに書いているという日記、いつかどこかで公開された暁には絶対に教えてほしい。

途中、来場者の波が落ち着いて暇になったとき、疲れてきてもう早く帰っちゃおうかなとも思ったけど、15時半頃持って行った30部全て完売した。最後の一冊は見本誌で、ちょっと考えますと一度離れたご年配の方が戻って来て下さったのだ。「見本誌でも構いませんよ、そのままいただけますか」と言って買って下さった。

始まってすぐは絶対完売なんてしないんだろうな、と思っていたので感動して片付ける手が震えた。全部を回って見る体力は無く、文フリで絶対欲しいと思っていたタイムトラベル同人誌『超個人的時間旅行』、ブースがお向かいでお話しも出来たあやめしさんの『そんなわけで、今日もおつかれさまでした。』、前々から気になっていた藤本和剛さんの『プールサイド』をサササッと買った。

藤本さんのブースで「日記本完売したんですか、すごいです」と声をかけていただいて、砂になりそうなほど恐縮した。斜め前だったので見えていたらしい。手に取った本は装丁が素敵すぎてこれがプロが集まって作った本か…!と感動した。デザイン、紙質、写真もフルカラーで紙や字体の色もとことん「プールサイドみたいな色」に拘ったそうだ。

上機嫌で帰りの電車に乗る。全て完売したとしても、文フリの出店料や本を刷った料金とトントンどころかむしろマイナスなのだけど、やっぱり完売はめでたいのでお祝いにロイヤルホストで豪遊した。レモンサワーを飲んで黒×黒ハンバーグを食べた。ムール貝とポテトも。

ハーゲンダッツクリスピーも買うよ!とファミマに寄ったら、ニカッとしながら「奢る」とTさんがレジに持って行ってくれた。コンビニを出るとさっきより雨が強くなっていて、家まで手を繋いでバシャバシャ走った。帰り道、Tさんは「全く初めてのことをやり遂げて、しかも全部売るなんて俺はゆきこが誇らしい」と目を見て言ってくれた。頭から爪先まで嬉しかった。本当に体験できて良い一日だった。