指先とハンドクリーム

食べたり読んだり日記を書いたり

日記:6月12日〜14日

6月12日(月)

今日お昼にTさんが作ってくれたチャーハンはエリンギとじゃこがたんまりと入っていて、バターとパセリの味付けでちょっぴり洋風だった。バターの香りが移ったエリンギと塩気の効いたじゃこがとても合う。たまに噛んだときにふっとパセリの風味がして、お昼ご飯をぶっかけうどんや卵かけご飯でよく済ます私は、こんなレベルの昼食なんて嬉しいねぇと思いながら食べた。Tさんはやっぱり料理のセンスがある。多めに作ってくれたからお弁当にも詰めてリュックに入れて、遅番で出勤。今日も何だかんだと言いつつ比較的平和に終えた。

退勤後の帰り道、学生バイトの女の子に「ゆきこさん、イヤホンって何使ってますか?」と聞かれる。「AirPodsやで」「ノイキャンついてます?」「ううん、ついてないやつ」ノイキャン…!?と思う。ノイズキャンセリングの略語を初めて聞いた。「今まで普通のイヤホン使ってたんですけど、今日ノイキャンつきのイヤホンに変えたら通過列車が近づいてくる音とかも本当に聞こえなくて。ぶつかりそうになりました」と笑うので「黄色い線の内側までちゃんと下がってね!?」と本気で注意した。ノイキャン、怖い、危ない。

 

6月13日(火)

20代最後の日。当たり前だけど、いつもと変わらない普通の一日だった。

起きて、洗い物をして、日記を書いて遅番で出勤。思えば21歳の頃からこの仕事をしている。一瞬、今日は集大成のような、素晴らしい接客をしよう!と思ったけど、いつも以上のことが突然出来るはずもなく、特段素晴らしいわけでもなかった。

閉店前、Sに「私ごとですが今日は20代最後の出勤なのです」と言うとおお!と驚き、それを聞いていた他のスタッフも「おめでとう〜!」と言ってくれて嬉しかった。社員さんは「ようこそ〜♪」と言っていた。

いつも通り帰宅、お風呂。窓を開けていても部屋中がむしむしして、お風呂上がりから眠るまで汗が止まらなかった。Tさんはギリギリまで起きていてくれたけど先に寝ていて、私はカーテンと網戸の間に立ってしばらく涼んでいた。明日から30代。だからって変われるわけでもないけど、もっと強く、もっと優しく、もっと笑顔で生きていきたい。

 

6月14日(水)

5時半にんばっ!と目が覚める。今日は誕生日だ…30歳になってる…!と起きた瞬間に興奮した。いや、でもとりあえずもう少し寝よう、と目を瞑ったけどTさんが枕元にプレゼントを置くんじゃないかとそわそわしてなかなか眠れなかった。今までの誕生日やクリスマスには起きたときに枕元にメッセージカードが仕込まれていて、いつの間に!?と思っていたのだ。今回もそうだ、きっとそうだ…!と思いながらなかなか寝付けず、Tさんがカードを置いたのと同時くらいに手を伸ばして見た。Tさんらしい文章で、全く浮ついていない、真っ直ぐとした内容だった。いつもより丁寧に字を書いたのが分かって嬉しかった。最後の方に「プレゼントがまだ届きそうになくて、ゆきこが開けるまで中身は秘密ね」と書いてあってすごく気になる。起きて、Tさんにありがとうを言う。「ゆきこ誕生日おめでとう!」と言われて嬉しくなる。

興奮冷めやらず、今すぐにでも出かける勢いだったけどまだ7時半だったのでTさんに落ち着くように言われる。確かにまだどこも店が空いてないしな。ゆっくり身支度して、お昼前にちょっとお高めのカフェに行って、テラス席で大きなアフォガードのパフェを食べた。濃厚なバニラアイスと苦いエスプレッソの組み合わせがたまらなくて、いくらでも食べれるほど美味しかった。空は分厚く曇っているけど、テラス席はそよそよ風が吹いて気持ちが良かった。平日のこの時間、席はガラガラでTさんとひとしきりおしゃべり出来た。

サンドイッチを買って、植物園へ。6月は春と夏のいいとこ取りみたいな季節で、いろんな花が生き生きと咲いている。バラと紫陽花が見ごろでどっちも好きな花なので嬉しかった。Tさんはいろんな種類のバラの匂いを嗅いで周り、満足そうに微笑んでいた。Tさんはもりもりと図体がデカく勇ましいのだが、お花や植物が大好きで、その繁々と眺める様がギャップ萌えというか胸キュンポイントである。クマさんみたいで可愛らしい。夕方まで園内でゆっくりした。

夜、予約していたジンギスカンのお店へ。ついに楽しみにしていたラム肉が食べられる!ドーム状になった鉄板の上でラム肉を焼くと肉汁がどんどん野菜が敷き詰められている窪みに落ちていく。お肉は柔らかくて濃厚で、肉汁が絡んでツヤツヤになった野菜は甘くて、交互に食べるごとに感動した。楽しい日にしてくれたTさんに感謝。

帰ってお風呂に入り、寝る前にふと不安になった。よく分からないけど今日送られてきた市民税の封筒を見たのがきっかけで、現状に、だと思う。このままこれを続けていていいんだよね、というような。どうしたって結婚の話になり、Tさんは何度でも同じ答えを言う。お金のことも、子供のことも、漠然としていてそのときにならないとよく分からないことが辛い。Tさんはなだめてくれたのに、私は背を向けて寝てしまった。30代になったら、大船に乗ったつもりで、焦らずに比べずにどーんと構えていよう、と思っていたのに初日から出来ていなくて愕然とする。素敵な一日だったのに、背を向けて寝るなんて幼稚だった。少しづつでいいから成長していきたい。