指先とハンドクリーム

食べたり読んだり日記を書いたり

日記:3月26日〜28日

3月26日

朝起きてから、Tさんにまた結婚の話を持ち出してしまった。昨日の後輩カップルの話が羨ましかったと泣いた。彼は「周りの人たちは関係なくて、大切なことのタイミングくらい自分たちで決めたい」と言っていた。私はTさんを責めたくはないし、彼の人生を尊重したい。それでも生活の中で刺激を逃れることは出来ない。人の報告を見たり、聞いたり、言われたりする。その度にTさんに同じような問いかけをして、確認をして、それで信頼関係が深まるわけでもなくただ彼を傷つけているのならなんて無駄なんだろうと思う。なんでそんなに気にしているんだろう。すっかり元気のない私を見て「水族館にでも行こう」と言ってくれた。私はたくさん泣いたために頭が痛くて、さらに花粉も酷くて目がしぱしぱで辛かったけどTさんと水族館に行きたいから身支度をした。

とりあえずカフェに来たが頭と目が痛くてぼんやりしていた。外は雨が降っていて、冷えている。お昼になり、パスタを食べに店へ向かったが気分が悪くてあんまり食べられそうになかった。Tさんに言うと「顔色が良くない、帰ろう」とサッと指で頬を撫でた。その自然な仕草と心配するような表情を見て胸が痛くなった。私のために出かけてくれて私のために帰ってくれるこの人を大切にしなければならない。30歳になったら、周りはどうでもいいと、言い切れるようになりたい。SNSの報告で見た「20代のうちに結婚できて良かった」という言葉にも、もう傷つく必要はない。

パンなら食べたいような気がしたので美味しいパン屋に寄って、サンドイッチやデニッシュなどを買って帰った。イブを飲んで、布団に潜りながらパンを食べて痛みが落ち着くまで寝ていた。

 

3月27日

昨日に続いて今日も寒い。暖房をつけようか迷ってTさんに言うと、つけるほどではないというのでちょっと我慢した。まだ頭痛が残っている。日記を書いたりネットを見たりした。滝口悠生さんの「ラーメンカレー」が読みたいと思い、あらすじを見ると『35歳、9月。ロンドンで高校の同級生の結婚式があった。』と書いてありそれを見てなんだか、今のこの結婚していないという状況は別におかしくもなんともないんじゃないか、と思ったのだった。ただ年齢に囚われているなら本当にばかばかしいが、そういうことなのだろう。あまりにもちっぽけな枠組みしか見えていなかったのかもしれない。こんな呪縛があるなら29歳なんて早く終わってしまえ、と思う。

夕方、Tさんとラーメンを食べに行った。桜が咲いている。わぁ、と思ってもそれが昔ほどの感動じゃなくてちょっと寂しくなる。もう桜の季節か、という感覚。Tさんと豚骨ラーメンを美味しい、本当に美味しいと何度も言い合いながら食べて、それが幸せだった。スーパーに寄って魚や牛乳を買って帰った。

今日は暖房をつけなかったから体が冷えたんだよ!とぷりぷり抗議して、お風呂の温度を上げて湯船に浸かった。ポカポカになった。

 

3月28日

この頃、Tさんがカーテンを開けると朝日が顔に直撃して眩しくてびっくりする。春の朝8時はそういう日差しの角度なんだな。野菜を摂るために小松菜とじゃこをよおく炒めてふりかけを作った。ご飯にそれだけを乗せ、お弁当にして持っていく。

遅番で出勤、夕方お弁当を食べていると男の子の学生スタッフに「めっちゃ美味そう!それなんスか!」と見られて恥ずかしくなる。「これはゆきこさんお手製ふりかけだよ。小松菜とじゃこの。料理が億劫でこんなお弁当なん、やばいでしょ」と言うと「いや、俺そういうタイプの弁当めっちゃ好きなんスよ!」と言われへーと言いつつ内心嬉しかった。そういう弁当の分類があるのか(のり弁的な?)。そしてこういう弁当を好きな人がいるのか。

閉店作業をする前に店長に呼ばれて急いで行くと、はい、とプリントを手渡される。店長が済ませた業務内容を印刷したもので、次私が同じようなことをするときに参考に出来るよう、わざわざ印刷して持って来てくれたのだ。渡された瞬間にそのことが分かり、嬉しさが爆発した。「店長、こいつよく分かってないなと思ってわざわざ印刷して来てくれたんですね!?」と言うと笑っていた。なんて優しいのだろう。私が勝手にプレッシャーを感じてビクビクして、よく分からないままにそれでも何か手は動かさないと思っているのをきっと全部分かっているんだと思った。嬉しい。紙1枚でそれが伝わった。今日はいい日だ。

閉店作業中は気がそぞろで普段しないような凡ミスをし、それでも店長に昇格したことをネタに笑ってもらえて、私は心の底から気が軽くなったのだった。凡ミスも良いタイミングだった。ゴキゲンで帰りゴキゲンでTさんと話しゴキゲンで寝た。