指先とハンドクリーム

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優しい人

優しい人になりたい。私はよく優しいねと言われる。良い人とも言われる。それは職場で言われる。帰り道「どうしてそんなに良い人なんですか?」と言われた。「そこまで良い人ちゃうよ」と言うと「そういう人ほどそう言うんですね」「なるほどなぁ、いや、さすがだなぁ」とか言われた。そんな風に人に伝えられるあなたが良い人なのだ。私は本当にそこまで良い人ではない。しんどい時に手を抜くし、そういう時に自分じゃない誰かが大変そうでも気付かないフリをしたりする。私の優しさは限定的だ。出来る時だけだ。

私は優しい人が大好きだ。優しい人のことをいつまでも覚えている。

unicoという家具屋さんでとても優しいお姉さんに出会った。欲しいデスクがあって何度かお店に見に行っていた。前から見たり斜めから見たり触ってみたり。脚などはラタンで出来ていてすごく可愛いのだ。ドレッサー用の小さめなデスクなのだけれど、座ってみて仕事も出来そうだと何度も確かめた。

その日はお店でフラワーベースフェアをしており、たくさんの花瓶が置かれてあった。これをあのデスクに置いたら、お花なんて一輪生けてみたら…可愛いぞおおと見ていたら声をかけられた。私は「あのデスクが欲しいけど今は買えなくて、それでこの花瓶を置いたらもっと可愛いだろうなと思って見てました」と、あせあせしながらペラペラっと喋った。私よりかなり歳下だろう可愛い女の子だった。「絶対素敵だと思います!あのデスク、ラタンで可愛いですよね」ニッコリされて、少し安心した私は「あの、どれがあのデスクに合うか、置いてみてもいいですか…?」と面倒なことを言った。まぁまずどれを置いてもそれなりに可愛いし、勝手に置いてみて下さいと言われるだろうと思っていたのに「置いてみましょ置いてみましょ!どれが合いますかね〜」と、一緒に選んでくれたのだった。嬉しかった。何種類か置いてみて色が〜とか大きさが〜とか話して青い花瓶を買って帰った。家具屋さんなのに。たった千なんぼの花瓶なのに。感動しながら帰った。

後日、Tさんに駄々をこねて私はラタンのデスクを買いに行った。あの子いるかな、あの子から買いたいなと思っていた。きっとノルマとか売上達成率とかあるのだろう、あの子の少しでも足しになれば。違う店員さんに声をかけられたけれどちょっと考えますと言ってあの子のところに真っ直ぐ歩いていった。「すみません、あのデスク下さい。」

時間があったから付き合ってくれただけかもしれない。そういう風に雑貨から入るお客さんもいるのだろう、ただの接客だったのかもしれない。たまたま機嫌が良かったのかもしれない。その限定的かもしれない優しさを忘れられず、思い出のある花瓶と共に私はラタンのデスクの前にずっといる。私の限定的な優しさでも、誰かを幸せに出来ることもある。明日も少しでも優しい私でありたい。

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