指先とハンドクリーム

食べたり読んだり日記を書いたり

最近読んだ三冊

今日は引っ越し当日!今新しい家に向かっているところなので下書きしておいたことを更新しようと思う。しばらくゆっくり本を読む時間はなさそうだけど、落ち着いたらまた時間を作って読みたいな。

本に触れている時間はやっぱり豊かだ。

最近読み終えた3冊について。内容に触れているので、これから読む方はご注意下さい。

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「やめるときも、すこやかなるときも」窪美澄

来る日も来る日も椅子を作っている家具職人の壱晴と会社員の桜子。壱晴は過去にあった出来事が原因で12月の数日間、声が出なくなる。それを知った桜子との物語。

実家暮らしの桜子は家庭に複雑な事情を抱えていて、桜子の稼ぎがないと生活がままならない状況である。酒に溺れる父、暴力を振るわれるままになっている母、自分より早く結婚し、子供をつれて実家にたびたび帰ってくる妹。そんな桜子が壱晴と出会い、声が出なくなること、過去にあった出来事を知り少しづつ変わっていく。家族も変わっていく。その感じがとても良かった。壱晴の過去についても明らかになっていくが、桜子の心情の方にとても惹かれた。最後はとてもさっぱりとした終わり方で、桜の散る穏やかな日みたいな気持ちになった。

壱晴が川辺で食べていた卵サンドがとても美味しそうだった。ネルドリップで淹れていたコーヒーも。作中に出てきた卵サンドは厚焼き卵のタイプだった。

 

「それからはスープのことばかり考えて暮らした」吉田篤弘

吉田篤弘さんの作品は随分と前に本屋で立ち読みした際に「なんか洒落ている…けしからん!」と意味の分からない印象を持ったキリ、読んだことがなかった。が、この作品がなんとなく気になり買って読んで、すぐに大好きになった。立ち読みした時に感じた「なんか洒落とるなぁ」というのは何かというと…上手く説明できないが、吉田さんの書く文章は”物語”という感じだ。映画を見ているような感じ。それがとても心地よく、読みやすい。それと、少し洋風なテイストが多いように感じた。シネマ、スープ、サンドイッチ、マダム…などなど。それが洒落てると感じた理由だと思う。

この作品に出てくる登場人物はみんな愛らしい。一人一人にドラマがあり、親しみがある。主人公のオーリィ君という青年は商店街にあるサンドイッチ屋さんで働き始める。そのサンドイッチに合うスープを作ることを任命され、試行錯誤する日々が始まった。スープみたいに温かい物語だった。サンドイッチ屋〈トロワ〉のハムのやつ、私も食べたいなぁ。

 

つむじ風食堂の夜吉田篤弘

「それからはスープのことばかり考えて暮らした」がシリーズものだったことを知り、それなら第1作目も読まなきゃと手にした。”月舟町シリーズ”と呼ばれるもので3冊の作品+番外編を含めた4冊の構成になっており、順番関係なく楽しめるようにもなっている。

食堂に訪れる人々を描いた作品。悩んでいたり考え事をしていたり、定食を味わっていたり…。外で一人で食事をする時の私とおんなじだなと思った。ほとんど毎日タンクトップ氏と一緒にご飯を食べるのでいつも何かお喋りをしているが、たまに外で一人の時は黙々と食べる。何も考えずぼーっと食べるのが好きだけど、色々考えてしまうときもある。どっちもいい。そういう風にぼーっとしたり、はたまた考えたりできる場所っていいよなぁと思う。

この作品も登場人物が最高にユニークで愛らしい。

 

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新しい家の新しい風に吹かれながら、やっぱり穏やかに日々過ごしたい。着いたら荷解きか〜…早くゆっくりしたいので頑張るとします。