指先とハンドクリーム

食べたり読んだり日記を書いたり

日記:9月29日〜10月2日

9月29日(金)

休み、晴れ、最高。強いて言うなら左肩が凝っている。大掃除はそこまで気分が乗らず、今日は洗面台だけした。

Tさんから「2ヶ月だけ食費を多く出してほしい」とお願いされた。聞き入れるのだから意見を言う権利はあると思い、今まで口出ししないでおこうと思っていたことをまとめて言った。10月から時給が上がるとはいえここまで昇給するの結構頑張ったんだし、フリーターって言ってもねぇ、などと涙をこぼしながら言い分を話す。別に泣く必要は無いんだけど真剣に伝えたいとき絶対泣いてしまう。和解&交渉成立。私はすごくケチなんだろう、100%納得してないとお金を出したくない。スッキリしたのでよし。

金曜日はアパートに清掃のおじちゃんが来る日らしく、昨日Tさんが廊下にわらわらいるカメムシを集めてくれていた。するとお隣さんも便乗してカメムシをそこに集めており、隅っこにカメムシが積もっていた。気持ち悪くて直視できない。絶対に清掃のおっちゃんに持って帰ってもらおうという我々とお隣さんの固い意志を感じる。

カフェ行って来る、と家を出たTさんが玄関の前にちょうどいた清掃のおじちゃんとカメムシトークしていた。あとで聞くと管理人さんだったらしい。きれいに持って帰ってくれていた、良かった。

午後、身支度をして買い物へ。昨日、いい香りの紅茶を飲んだ時のホッとした気持ちを母にも味わってほしくて、ステンレスボトルとティーバッグをプレゼントすることにした。リフレッシュ出来るハーブのアロマもつけちゃお。なんでもない日に、いきなり家にプレゼントが届いたらきっとすごく喜ぶぞ〜とニヤニヤしながらそれぞれのお店でそれぞれを買った。そのままカフェで手紙も書いて郵便局へ。配達伝票を記入して窓口で荷物を渡したら「えっとー、アロマオイルの引火点は分かりますか?」と尋ねられた。インカテン…あっ、引火点?火がつくかってこと?と頭で処理して、雑貨屋で買ったアロマオイルで引火点は分からないです。ちょっとネットで調べてみてもいいですか?とスマホで検索した。商品は出てくるけど、引火点はどこにも載ってない。「ではお受けできないですねー」と返されマジで?となる。品名のところにアロマオイルなんて書かなきゃよかった、大人しくタンブラーとだけ書けばよかった…。

送れない箱を手にしたまましばらく彷徨う。か、悲しい。もうそろそろ夜になりそうだから帰らないと、ととぼとぼ歩いているうちに気づいたら本の栞の前に立っていて、そういえばここはコーヒーも飲めるなぁと思い店に入る。ひとしきり本棚を見てからコーヒーをお願いする。店主が淹れているのを見ながら「あのう、さっき郵便局で母にプレゼントを送ろうとしたんですけども」と超個人的な話をしてしまった。スーパーのおばちゃんか、私は。「えーそんなことが」「オイルを送るのが難しいだなんて私全く知らなくて」「私も知らなかったですね」とちょっとおしゃべりに付き合っていただいた。コーヒーをもらって店を出る時に「なんかいいことあるといいですね」と言われた。はい、とにっこり返す。

あー寄って良かったなぁと思いながらコーヒーを一口飲むと、え!と思わずびっくりするほど美味しくて、本屋さんなのにコーヒー淹れるのも上手いんや…とニコニコ歩いた。すっかりいい気分になって、このまま歩いて帰っちゃおうかなと思ったけど途中で我に帰ってしっかり電車に乗って帰った。

 

9月30日(土)

久しぶりに早番で出勤。あんなに暑かった通勤路がちょっとさわやか。朝から元気にもりもり働いた。今日のゆきこさん張り切ってるぅと自分で思う。夕方頃とんでもないお客さんの波が来て、皆で必死に手を動かした。思うように働けた日は楽しい。

履いているローファーの、左の中敷がとうとう取れてしまった。この靴はTさんが新しいお店でも頑張ってね、とクリスマスにプレゼントしてくれたものだ。修理に出さねば。

スーパーに寄ってお弁当を買って帰宅。YouTube東京03のコントを見ながら食べた。まだ見たことのないネタがアップロードされていて、いくつか見たけれどどれもこれも面白くて吹き出してしまう。次の単独公演こそチケットを取って、生でコントを見てみたい。

 

10月1日(日)

ついに10月、ここまで来たか。すっかり秋めいて〜というほど日差しは柔らかくなく全然半袖で過ごせる。早く長袖のしましまが着たい。遅番で出勤、今日も上々にこなす。そういえば明日から連休だ。何のためのって、親知らずを抜くからで…と気づいて気が重たくなる。痛いのだけは絶対にイヤなのに。怖い。

 

10月2日(月)

親知らず抜歯当日。前回、親知らずを抜いたのは二年前とかで、そのときの記憶がうっすらとしている。どんな感じで抜いて、どのくらい痛かったっけ?無理に思い出さなくてもいいのであまり考えないことにする。外の風が涼しいのでクーラーを消して、家中の窓を開ける。おお、結構涼しい。

お昼はTさんにお願いして、いつものとびきり美味しいトマトパスタを作ってもらった。モッツァレラチースのトッピングつき。パスタを巻き巻きして、口いっぱいに頬張った。うまーい!これが最後の晩餐。

くどうれいんさんの『桃を煮るひと』を読み終えた。食べることと生活は切っても切り離せなくて、食べることへの執着、生活への執着っていいなと思った。いくつかお気に入りのエッセイがあって、また読み返したい。「大根の面取り」「苺ジュース」が好きだった。

時間になるまでベッドにごろん、として洗濯物が揺れているのを見ていた。秋ですね。支度して、家を出る頃にはさすがに気が重たくて、Tさんにこの世の終わりのような顔で別れを告げる。今から私は歯を二本抜きますけどどう思いますか?と顔で訴えた。

予約していた病院に着くとすぐ呼ばれ、すぐ台に乗った。前回と同じく小柄で私より若そうな女性の先生が来て「今日はよろしくお願いします」と言うのであなたが抜くんですね!?結構難しいらしいけど大丈夫なのかな、と失礼ながらも不安になった。歯を抜くとき、男の先生でも精一杯の力を込めて手がぶるぶるしていたのを思い出してどんどん不安になる。

「血圧を測りながら処置して行きますねー」と腕にあのパッドを巻かれる。麻酔を、これでもかというほど打たれる。前回は、たしか3チクくらいだったはずだけれど、今回は15チクくらいあった。痛い。麻酔を打たれている間の自分の心拍数が早すぎて恥ずかしくなる。

埋没している下の歯は切開して4つほどに割って取り出し、上の歯はそのまま引っこ抜く予定だったのに、上の歯が引っかかって全然抜けないらしい。「うーん抜けないです」と教えてもらった。処置の間、私の心拍数は張り裂けそうなくらい速くて、その音が私をもっと緊張させた。「大丈夫ですかー?」と言われる。大丈夫なわけあるかい。と思いながらも「あいよううえす」と答える。先生が力いっぱい引っこ抜こうとして、腕がぶるぶるしているのがほっぺた越しに伝わって、そんなに力をかけて、引っこ抜けたとき反動でガチャン!と器具が当たったら!どうするんですか!と怖くてちょっと泣いた。「うーん抜けない笑」と先生と助手の方達の間でちょっと諦めの空気が流れたとき「このままの状態で放置されて皆帰っちゃったらどうしよう」とありえない心配で胸がはち切れそうになった。抜けない歯ってどうすることになっているんだろう、マニュアルとかあるの?別の先生に助けを求めるとか…。どうか、どうか抜いて、それでちゃんと縫い終わってからにして下さい、帰るのだけは、どうか…。と祈った。

しばらくたってから「あのう…抜けそうえすか?」と恐る恐る聞くと「あっもう抜けてますよー」と言われた。教えて下さいよ!!!薬を入れて縫い終わって起き上がった私は汗びっしょりで目の下は涙でかぴかぴで口の周りは血だらけだった。コットンで先生が血を拭いてくれる。私はハンカチで汗と涙を拭く。疲れがすごい。

先生が歯を見せてくれた。下の歯は神経に圧迫されて変形していた。先生もすごく大変だっただろうに、やり切って下さってすごい、本当にお医者さんというものはすごい。医療はすごい。助手の方に抜糸の日取りやこのあとの注意事項の説明をしてもらい本日は終了。麻酔が効いているのとガーゼを噛んでいるのとで何も喋れなかったけど、帰る前に先生にお礼だけは絶対に伝えたくて、呂律が回らないのは承知で「あの!ほんおうい、あいあとごあいあした!」と先生の背中に向かって言った。一回目は聞こえなかったみたいで無視されたのでもう一度言った。私の恥ずかしさより感謝を伝える方が大切だ。

薬をたくさんもらって、帰宅。Tさんに一連の流れを話す。「見た目で判断しちゃダメ」と怒られる。普段から、あんなに見た目で判断してはいけないと注意深く思っていても、私は平気で見た目で判断していたなと反省。先生、立派だったな。

ガーゼを外した途端、びっくりするくらい痛くなってきて急いで頓服を飲んだ。シャワーを済ませて、レトルトのお粥を食べようとしたけど、少し動かしただけで痛くて二口しか食べられずまた薬を飲んだ。これから治るまで長い戦いなのかな、としょんぼり寝た。